【幻】モーニン・ブルーズ 2018/06/30

mb180630

 

TM. Walikin’ Blues「アサー」入り / Paul Butterfield Blues Band

-R.Johnson-  Rhino 8122 798434 0

 

N  おはようございます。アサー、ワツシイサヲです。2018年6月最後のアサーです。今年

の半分がもう終わっちゃったよ。ちょっと早くなって来た感じ。如何かな。

まずは先週お話ししたルーシンダ・ウイリアムズ、自主活動期のアルバム、1980年発表

の『ハピー・ヲーマン・ブルーズ』から、表題曲です。

「ハピー・ヲーマン・ブルーズ」。

 

M01.Happy Woman Blues(3’09”)ルシンダ・ウイリアムズ

-unknown-  BSMF 7560

 

M02.Sharp Cutting Wings(3’36”)ルシンダ・ウイリアムズ

-unknown-  BSMF 7560

 

N  ルーシンダ・ウイリアムズ、1980年発表の『ハピー・ヲーマン・ブルーズ』から、表題曲、

「ハピー・ヲーマン・ブルーズ」、「シャープ・カッティング・ウイングズ」2曲聞いて頂きまし

た。当たり前だけど、唄うまいね。「ハピー・ヲーマン・ブルーズ」のリズム感は特に

傑出しています。ジョニー・ウインターみたいだ。「あなたと誰も知らないよその国

に行ってしまいたい・・・」、「シャープ・カッティング・ウイングズ」の方には、今の

ルーシンダの作風に繋がる要素を感じました。先週の『ラムブリン』と、彼女の初期

の2枚を聞いて、ブルーズ的な楽曲が多いのに、驚いています。こうして深く

親しんだ根っこが今のルーシンダを支えているのでしょう。

さて、2ヶ月ほど前かな。家の側の新しい中古盤店で、珍しいCD組み物を

見つけました。もうあまり目にしない、2枚が縦に入るサイズの箱入り盤です。

表題に「フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・スウィング」3枚組とあります。1938年と39

年にカーネギー・ホールで行われたあの歴史的な音楽会「フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・スウ

ィング」の実況録音である事は間違いありません。ただそれはヴァンガードから2

枚組みでLP時代に発売されていて、CD期初頭にも出し直しされていた筈。

わたしもキングからの国内盤で持っています。

「何故だろう」という疑問が湧き、恐る恐る値段を聞きましたところ、アッ

と驚く超安値。即座に購入しました。中のCDは、それぞれケイス毎に厚手のピ

ニール袋入りで、状態はミントに近く良好。断然お買い得でした。

聞くところによれば、現在この形の組物は、業者間で今一番厄介物扱いさ

れているそうです。わたしは結構持っていますが、確かに最近新譜では見か

けませんね。だから在庫処分的価格なのかな。

家に持ち帰ってキング盤と較べ合わせてみると、収録曲にかなり違いがあり

ます。まず冒頭曲から異なっていました。

 

M03.Swingin’ The Blues(3’35”)Count Basie And His Orchestra 

-Basie, Durham-  Vanguard 169/71/2

 

N  3枚組『フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・スウィング』から、まず1曲目の「スウィンギン・

ブルーズ」、カウント・ベイシーと彼の楽団でした。これは未発表だった録音です。何

故お蔵入となったのか、その理由が分からない位に素晴らしい演奏です。メムバ

が掛け合う声が臨場感たっぷりですね。

既発のLPならびにCD2枚組の実況録音盤はベニー・グドマン六重奏団の「アイ・

ガタ・リズム」で始まっています。こちらはLP用編集時に大幅な順序入れ替え

が行われた模様で、グドマンの「アイ・ガタ・リズム」は39年の演奏でした。まあ、

こういう順序の変更を特に悪いとは思いませんが、録音詳細は全て大雑把に

「1938年12月23日、1939年12月24日 カーネギー・ホールに於けるライヴ録音」

となっしかなっていません。各トラックごとに録音日時程度は、はっきり記して

おいて欲しかったですね、最初から。

とは言え、こちらの新しい3枚組が実際の音楽会の進行通りだったかとい

うと、そうでもない。この音楽会の企画制作責任者ジョン・ハモンドの自伝では、

ミード・ルクス・ルイーズ、アルバート・アモンズ、ピート・ジョンスン3人のブーギ・ウーギ・ピアノ

連弾で幕を開けた事になっています。どうやらこの「スウィンギン・ブルーズ」は、

ジョン・ハモンドの正式な開会宣言の前、ひょっとして客入れ時間に、演奏された

のかも知れません。なんとゼータクな。ただ当日会場で配られたらしいパンフレット

の順番とも違っています。新しい3枚組自体は基本的に実際の公演の流れに

沿っているように構成されていますけれども、真実は霧の彼方に。各曲間に

お行儀の良い拍手が入っていて、それぞれフェイドアウト処理されています。これ

も不思議です。それはともかく、今朝はこの新版『フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・

スウィング』から、これまで未発表だったトラックを聞いて行きましょう。この「フロム・

スピリチ ュアルズ・トゥ・スウィング」コンサートは、「ニューヨークの音楽的に洗練された聴衆に

聴かせるために、黒人音楽のコンサートを催す」という「長年の夢」を持っていた

ジョン・ハモンドが左翼系新聞社の協力で実現させた歴史的な音楽会です。開催に

至るまでには様々な出来事がありますけれど、「幻」の重度聴取者の皆さん

は、朝の気軽なBGMとして楽しんで下されば結構です。

音楽は全て分かり易く文句なしですから、たまにはこんなのもいいかな、

程度で大丈夫。演奏者の名前などが、少々ややこしくなりますが、ご了承下

さい。

それでは参りましょう。キング盤ではカウント・ベイシー・コムボという名前になって

いるカカンザス・シティ五重奏団の演奏です。

「アイ・ネヴァ・ニュウ」。

 

M04.I Never Knew(3’08”)Kansas City Five  

-Kahn, Fiorito-  Vanguard 169/71/2

 

N  カウント・ベイシーがピアノ、ジョ—・ジョーンズ、ドラムズ、ヲルター・ペイヂ、ベイス、そして

レスター・ヤングがクラリネット、バック・クレイトンがトラムペットというカンザス・シティ・ファイヴで、

「アイ・ネヴァ・ニュウ」でした。

以前のキング盤に比べて、音はとても良くなっています。音声の最終調整マスタ

リング技術の進歩が、分かります。1986年から1999年の月日の産物でしょう。

そもそもこの録音はジョン・ハモンドが個人的にアセテート盤に記録した物でした。後

年テープに移植され、雑音処理などが念入りに行われ世に出たという事です。

それが60年経って再び、以前より完璧な姿で発表されていたのです。

さて次がジョン・ハモンドの開会宣言に続いた出し物でしょうか。ミード・ルクス・

ルイーズ、アルバート・アモンズ、ジェイムズ・ピート・ジョンスン3人のブーギ・ウーギ・ピアニスト

の連弾です。これは3人が同時に複数のピアノを弾いているのかも知れません。

舞台にはウィングのアップライトとスタインウェイのグランドが置かれていました。

「ジャムピン・ブルーズ」。

 

M05.Jumpin’ Blues(2’22”)Meade Lux Lewis, Albert Ammons, Pete Johnson

-unknown-  Vanguard 169/71/2

 

N  「ジャムピン・ブルーズ」、ミード・ルクス・ルイーズ、アルバート・アモンズ、ジェイムズ・ピート・

ジョンスンのピアノでした。

この時、この場に、出張でヌー・ヨークに滞在していたドイツの貿易商社員が聴衆

のひとりで来ていまして、このブーギー・ウーギー・ピアノに感激して、ミード・ルクス・

ルイーズ、アルバート・アモンズの二人とその場で録音契約を結びます。その男はアルフレッ

ド・ライオンズという名前でした。ここに名門ブルー・ノート・レイベルの歴史が始まっ

たのです。

ではその時にライオンズを感激させたミード・ルクス・ルーイズのソロ、独奏です。

「ホンキー・トンク・トレイン・ブルーズ」。

 

M06.Honky Tonk Train Blues(2’38”) Meade Lux Lewis 

-Lewis-  Vanguard 169/71/2

 

N  こんな演奏を至近距離で聞かされたら、「その場で契約」というのも信じら

れますね。既に彼のヒット曲として知られていた「ホンキー・トンク・トレイン・ブルーズ」

でした。この頃ミード・ルクスはシカゴでタクシーの運転手をしていた筈です。幼い頃に

はヴァイオリンを習わされていたそうですが、ピアノに転向して良かったですね。私

は心からそう思います。当時の最先端のビート、ブーギー・ウーギーです。

次はカンザスシティからやって来て二人のブーギー・ウーギー・ピアニストと合流したピー

ト・ジョンスンが、この頃の友人だったジョー・ターナーがヴォーカルを紹介します。この

コムビネイションが素晴らしい。ブーギー・ウーギーとは若干違うリズム・アクセントのピアノ伴奏

にご注意。

「ロウ・ダウン・ドッグ」。

 

M07.Low Down Dog(2’22”)Joe Turner  Pete Johnson

-Turner-  Vanguard 169/71/2

 

N  ジョー・ターナーとピート・ジョンスンで「ロウ・ダウン・ドッグ」そして再びブーギー・ウーギ

ー・ピアノ、アルバート・アモンズのソロです。

極めつけ「ブーギー・ウーギー」。

 

M08.Boogie Woogie(3’48”)Albert Ammons

-Ammons-  Vanguard 169/71/2

 

N  今でもブーギー・ウーギー・ピアノのお手本のように聞かれているアルバート・アモンズ

の「ブーギー・ウーギー」でした。この完成度の高さ。20世紀に模細工から出てい

たミード・ルクスやアルバート・アモンズの録音集大成を聞き直したくなりました。左手

で叩き出されるビートが素晴らしい。「全力前進」感があります。こういうの

を聞くと、「トキヨ・ブーギー」、ありゃ何だという気持ちにもなりますね。

さて、次は女性歌手です。と言っても後年には髪の毛を金色に染めてエレキを

掻き鳴らし男どもを震え上がらせた、シスタ・ローゼッタ・サープです。ジョン・ハモンド

は「マヘリア・ジャクスンの先輩格」と呼んでいますね。この時はまだ黒人教会以外

で唄ったことがなく、単に「サープ姉」と名乗っていました。

金属リゾネイター付きのギターを巧みに弾いて唄い、大いにウケてます。2曲続けて

お聞き下さい。

「ロック・ミー」、そして「ザッツ・オール」。アルバート・アモンズがピアノを付けます。

 

M09.Rock Me(2’13”)Sister Tharpe

-unknown-  Vanguard 169/71/2

 

M10.That’s All(1’36”)Sister Tharpe 

-Tharpe-  Vanguard 169/71/2

 

N  3枚組『フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・スウィング』から、これまで紹介されていなか

った録音をお聞きいただいている今朝の「幻」モーニン・ブルーズ、普段とはだい

ぶ趣きが違うので、戸惑っている方もいるかも知れません。確かに今から80

年も前の音楽ですから、スピーカーの鳴り方も違いますが、そこから見えてくる

歌い手、演奏家の表情や動きは何とも新鮮です。全員が生き生き、伸び伸び

していて、聞いているとイノチのチカラ放射を浴びる思いです。

さて次はノースカロライナ州キンストンから呼ばれたゴスペル教会のクヲーテットです。水道も電

気も来ていない丸太小屋に住んでいた労働者のグループ、ミッチェル・クリスチャン・シンガ

ーズで、

「アー・ユー・リヴィング・ハムブル」。

 

M11.Are You Living Humble(2’51”)Mitchell’s Christian Singers

-trd.-  Vanguard 169/71/2

 

M12.Milenberg Joys(1’46”)New Orleans Feetwarmers  

-Mares, Melrose, Morton, Roppolo-  Vanguard 169/71/2

 

N  ここまでジャズ、ブーギー・ウーギー、ブルーズ、ゴスペルと聞いて来ました。いずれ

も真剣に向き合わざるを得ない説得力に溢れた音楽に当てられてしまったの

でしょうか、わたしもここまでで、既に少々疲れた感じです。でもまだまだ

「フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・スウィング」コンサートは続きます。お付き合い下さい。

今のディキシー調の演奏は、この日、1938年12月23日に組まれた、ヌー・オーリ

ーンズ・フィートヲーマーズという特別セッションで「ミレンバーグ・ジョーイズ」です。ピアノがピー

ト・ジョンスン、ベイスはヲルター・ペイヂ、ドラムズがジョー・ジョーンズという門外漢のリズム・

セクションですが、なかなかにヌー・オーリーンズの雰囲気を表現しています。こういう

ところや、先ほどのおそらく初対面だったであろうシスタ・サープとミード・ルクスの

間合いの絶妙さなどに、共通した北米国人音楽の流れを感じます。

全体構成はジョン・ハモンドが担当しています。彼は当時入れ込んでいたカウント・

ベイシー・オーケストラをクライマックスで登場させるために順序を考えていたようです。ま

た、出演者の殆どを自分自身が南部を旅して周り探し出して来ました。ロバー

ト・ジョンスンと出演契約をしたくて、訪ねて行ったら殺されていた、という話は

よく知られています。

ではその代役にハモンドが連れて来た男性ブルーズ・シンガーを聞いて下さい。

ビッグ・ビル・ブルーンジーです。「イト・ヲズ・ジャスタ・ドリーム」。

 

M13.It Was Just A Dream(3’12”)Big Bill Broonzy with Albert Ammons

-Broonzy-  Vanguard 169/71/2  2-4

 

M14.Fox Chase(2’15”)Sonny Terry

-Terry, McGhee-  Vanguard 169/71/2

 

N  「夢の中でホワイト・ハウスでルーズベルト大統領の椅子に座っていた」とユーモアたっぷ

りに唄ったビッグ・ビル・ブルーンジーの「イト・ヲズ・ジャスタ・ドリーム」。この場の白

人たちは、これまでこんな歌を聞いた事がなかったでしょう。反応は驚きか

ら喝采に変わって行きました。

そしてハモンドたちがブラインド・ボーイ・フラーを探して訪ねた隣の家で、偶然に出

合って出演を依頼したソニー・テリーの「狐追い」。日本の民謡で例えるなら岩手県

の「南部牛追い歌」のようなものでしょうか。しかしそのおっとりした雰囲

気に較べると流石はキツネ、かなりすばしこいですね。本命のブラインド・ボーイ・

フラーは、生憎と妻を銃で撃った罪で刑務所に入っていて、連れ出せませんでし

た。目が見えなかったのに、どうやって奥さんを撃ったのでしょうか。映画

「ブルーズ・ブラザーズ」に出てくる質屋の親父、レイ・チャールズみたいです。

 

M15.Every Tub(2’54”)Count Basie And His Orchestra   

-Basie, Durham- Vanguard 169/71/2

 

N  カウント・ベイシー・オーケストラをクライマックスで登場させる狙いは見事に当たりました。

お聞きいただいた「エヴリ・タブ」の素晴らしさでお分かりでしょう。この1938

年後半というのは、ベイシー楽団の絶頂期でもありました。もう一曲聞いて下さ

い。今度は専属シンガーのジミー・ラッシングが加わります。

「スティーリン・ブルーズ」。

 

M16.Stealin’ Blues(3’43”)Jimmy Rushing Count Basie And His Orchestra  

-unknown-  Vanguard 169/71/2

 

N  さて次は今のカウント・ベイシー・オーケストラからの選抜されたメムバによるカンザス・シティ・

シクスです。先に登場した「ファイヴ」とは異なりまして、フレディ・グリーンがリズム・

ギター、そしてリオナード・ウェアがエレキで参加しています。このウェアのソロに注意して聞

いて下さい。

「アフター・ユーヴ・ゴーン」。

 

M17.Are You’ve Gone(4’52”)Jimmy Rushing Count Basie And His Orchestra 

-Creamer, Layton-  Vanguard 169/71/2

 

N  ギターを極めてモダーンな使い方で面白い音色を出しています。チャーリー・クリスチャン

より先進的です。リオナード・ウェアのギター・ソロが光った「アフター・ユーヴ・ゴーン」、カンザ

ス・シティ・シクスでした。

これで3枚組『フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・スウィング』に収められた。1938年の

実況録音は終わっています。しかし2枚目の最後にはカンザス・シティ・ファイヴ、先

のカウント・ベイシーがピアノ、ジョ—・ジョーンズ、ドラムズ、ヲルター・ペイヂ、ベイス、そして

レスター・ヤングがクラリネット、バック・クレイトンがトラムペットというカンザス・シティ・ファイヴのスタジ

オ録音が3曲入っています。録音は同年の6月3日。この音楽会の稽古に入っ

たのは秋口と言いますから、それよりも前のセッションです。ちょっと謎。しかも

そのうちの1曲「アレヂ・ウープ」はLP時代に「モーテイヂ・ストムプ」と誤った題名

で収録されていました。どこにも詳細が明記してないので、これも真実は霧

の彼方に。

今朝はこれらのスタジオ収録のうち未発表だった2曲をお聞きいただきましょ

う。

ガーシュインの「オウ、レイディ、ビ・グド」、

そして正調「モーテイヂ・ストムプ」、カンザス・シティ・ファイヴの演奏です。

 

M18.Oh, Lady Be Good(3’20”)Kansas City Five  

-Gershwin-  Vanguard 169/71/2

 

M19.Mortgage Stomp(3’30”) Kansas City Five

-Basie-  Vanguard 169/71/2

 

N  「オウ、レイディ、ビ・グド」、「モーテイヂ・ストムプ」、カンザス・シティ・ファイヴの演奏で

した。

「フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・スウィング」コンサート、は翌年の1939年にも開催され

ました。第一回は大変な評判で、ヌー・ヨークのあらゆミーディアから絶賛されました。

この時カーネギー・ホールは追加の客席を舞台の上に400も作る超満員でした。そし

てそこに集まった白人聴衆のほとんどは、それまで黒人の生演奏を見聞きし

た事がなかった筈です。彼らは驚き、その素晴らしさに心を打たれて帰途に

ついたのです。ジョン・ハモンドの「長年の夢」だった「ニューヨークの音楽的に洗練さ

れた聴衆に聴かせるため」の「黒人音楽のコンサート」は、大成功に終わったので

す。

ただ第二回は本人に言わせると「聴衆と出演者の間の一体感が欠けていた」

ので、構成演出その他では上手く行ったものの「第一回のときほどは成功し

なかった」のだそうです。完璧主義のハモンドならそういう判断をするかも知れ

ませんが、わたしにとっては残された音楽だけでも一回目と変わらず、素晴

らしい物ばかりです。それは今回初めて聞けた未発表曲においても同じ事。

さあ、聞いて行きましょう。

 

M20.Noah(2’50”)Golden Gate Quartet

-trd.-  Vanguard 169/71/2

 

N  ゴールデン・ゲイト・クヲーテットで「ノア」でした。彼らはこの39 年の「フロム・スピリチ ュ

アル・トゥ・スウィング」に出演して全国的に知られるようになりました。それまで

はノース・カロライナ周辺だけの存在だったのです。今なら比較的安価な組物で彼ら

の全貌を確かめる事が出来まして、やはりこの時期の彼らからは、何よりも

歌声が純粋な響きとして伝わって来ます。

さて昨年も出演したラグタイム・ピアニスト、ジェイムズ・.ピート・ジョンスンです。

「ブルベリー・ライム」。

 

M21.Blueberry Rhyme(3’26”)James P. Johnson 

-Johnson-  Vanguard 169/71/2

 

N  ジェイムズ・ピート・ジョンスンで「ブルベリー・ライム」でした。

次は女性ブルーズ歌手です。まずアイーダ・コクスで、「ロウダウン・ダーティ・シェイム」。

 

M22.Lowdown Dirty Shame(2’36”)Ida Cox 

-unknown-  Vanguard 169/71/2

 

M23.Old Fashioned Love(2’12”)Helen Humes  

-Johnson, Mack-  Vanguard 169/71/2

 

N  アイーダ・コクスで、「ロウダウン・ダーティ・シェイム」でした。J.P.ジョンスンのピアノ、ジョー・

ジョーンズがドラムズ、ヲルター・ペイヂがベイス、フレディ・グリーンのギター、トラムペット、トロムボ

ーン、テナー・サキソフォーンは、それぞれシャド・コリンズ、ディック・ウェルズ、バディ・テイトです。

この出演後、アイーダはジャズ演奏家たちと吹き込む事になります。こちらも「フ

ロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・スウィング」効果ですね。この音楽会では、「フォー・デイ・

クリープ」を唄って評判を得まして、そちらはLP時代に発表されています。

続けたのはヘレン・ヒュームズの「オールド・ファッションド・ラーヴ」、演奏はカウント・ベイシー

楽団でした。ヘレンはジョン・ハモンドと関係の深いジャズ/ ブルーズ歌手で、ベイシー楽団

の専属歌手になれたのもハモンドのおかげです。38年の「フロム・スピリチ ュアルズ・ト

ゥ・スウィング」でも唄っていました。今の録音はちょっとP.A.の出力不足でしょ

うか、唄がよく聞き取れませんでした。39年と言えば、既にビング・クロズビー

は巧にマイクロフォーンを操つるクルーン唱法を編み出していた筈ですが、やはり一般的

にはまだまだ前年出演のジミー・ラッシングのような大声量歌手時代だったのです

ね。

3枚組『フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・スウィング』の3枚目、39年の模様は既にLP

に収録されていた楽曲が多く、ひとつの決定的な録音を除くと、残りの未発

表曲はこれだけとなります。

ヘレン・ヒュームズで「今夜あと1時間一緒に居られたら」。

 

M24.If I Could Be With You One Hour Tonight(3’01”)Helen Humes 

-Creamer, Johnson-  Vanguard 169/71/2

 

N  2週連続になるかな、と思いながら始めた3枚組『フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・

スウィング』LP未収録曲目集、意外と収まりよくまとまりました。実際のとこ

ろ、この歴史的音楽会の録音を聞くのは久しぶりでした。そしてその内容に

改めて驚愕した、と言うのが本当のところです。今から80年も前に、よく

これだけの事ができたなあ、と舌を巻きました。

何度も出て来たジョン・ハモンドはヌー・ヨークの音楽制作者で、ボブ・ディランを世に

出した事で有名です。ロケンローとオルガン・ジャズが嫌いな他は、幅広く差別のない

音楽観を持って居ますが、本質的には狂信的な黒人音楽ファンで、人生の殆どは

黒人音楽家に捧げられたと言って良いでしょう。若い頃から全米国黒人地位

向上協会で活動し、人種差別と戦いました。ヤクザやチンピラ、背徳者ばかりの興

行界、音楽ギョーカイで、たったひとりの知性を持った正直な紳士だとも言えま

す。今でもそうでしょう。

ジョン・ハモンドのように地上の出来事全てに対しフェアな人間は他に居ません。

わたしはずっと長い事彼を尊敬し続けていますが、足元にも及ばないのが現

状です。

今回新しい3枚組『フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・スウィング』に出会い、引っ張り

出して来たのが、彼の自伝「ジャズ・プロデューサーの半生記 ジョン・ハモンド自伝」

です。スイングジャーナル社から1983年に発行されたこの書籍は、それはもう何度

も繰り返して読みました。それでもまた頁をめくると止まらなくなってしま

います。音楽を愛する全員が一度は読まなくてはいけない一冊です。訳も写

真図版も完璧とは言えないので、2020年改訂版を出してくれないかな。今週

のジョン・ハモンド自身の発言も、この本から引用しました。ジョン・ハモンドについ

ては、これからも事ある毎に名前が挙がるでしょう。皆さん、忘れないで下

さい。

 

M25.Pemoengkah(2’41”)Thomas Bartlett & Nico Mufly

– T.Bartlett, N.Mufly-  Nonesuch  7599-79303-6

 

N  ちょっと息抜きを。何とも調律の悪いピアノが鳴っています。トーマス・バレットと

ニコ・マーリイという二人組の環境的音楽。この微妙に外したような調整はその昔

にEGから出ていたララージを連想させます。初めて出会った彼らの正体は・・・

ちょうど時間となりました。

 

M26.Alberta(1’45”)バリー・ゴールドバーグ 

-unknown-  BSMF 8017

 

TM Born In Chicago 「アサー」入り / Paul Butterfield Blues Band

-N.Gravenites-  Rhino 8122 798434 0

 

N  最後は先週も聞いてもらった歴戦の鍵盤奏者バリー・ゴールドバーグの「アルバータ」

です。最新盤ではオルガンばかり弾いていましたけれど、最後に短いソロ・ピアノ

曲が入っていました。

さて、ジョン・ハモンドに倣って正直に告白しますと、今週の「フロム・スピリチ ュアル

ズ・トゥ・スウィング」コンサート考察はとても大変でした。昔からよく知っているもの

の、ここのところ疎遠で日頃馴染みのない領域の音楽、何よりも80年前の録

音ですので、確認の連続で時間もだいぶかかりました。「ミントに近く良好」な

状態だったこの箱物に添えられていた詳細な解説冊子は、何度もひっ引き合

わせているうちにヨレヨレになってしまいました。何せ粗末に扱い、安易な対応

をしたらバチが当たるという観念があるものですから、わたしなりに慎重を期

したつもりです。

前回までに出ていた物と今回ご紹介した全てで、「フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・

スウィング」コンサートが完全に再現された訳では決してありません。資料を照らし合

わせると、出演しているのに出て来ない歌い手もいます。アセテート盤の交換時に

当たってしまったという不幸かも知れません。順序も所々で微妙に違います。

とは言え、この歴史的「フロム・スピリチ ュアルズ・トゥ・スウィング」コンサートが、このよう

に今でも聞けるという事実は、21世紀に生きている私たちの歓びです。

「業者間で今一番厄介物扱いされている」形ですが、見つけたらぜひ手に

取ってみて下さい。詳しく探せば、この後で更に「コムプリート」と銘打った追加

曲目のある2枚組が出ていたりします。ただ値段がねえ・・・。

ここで一休み、あー大仕事だった。

特別付録は、以下の隠し場所です。どうぞお楽しみ下さい。

http://firestorage.jp/download/01ee02f44d8b979de4e41ad9cd435f5cf307ce71

  ダウンロードパスワードは、kq3ywkbtです。

今朝もちょうど時間となりました。

こちらは、http://osamusawada.com/category/mornin-blues-by-isaowashizu/

「幻」モーニン・ブルーズ、鷲巣功でした。来週も首都圏で9人のあなただけに。

そして全国で9500万人のあなたにも、アサー。

 


【大家よりお知らせ】

真夏の深夜の生放送決定!
2018年8月8日(水) 24時~29時(8月9日になった瞬間から早朝5時まで)
放送局:中央エフエム(84.0Mhz)※なんと中央エフエムでは、7月からウルフマンジャック・ショウが始まるそうです!
出演:ワシズイサヲ、サワダヲサム

ピーター・バラカンさんのイベント、「出前DJ」に鷲巣さん出演!
日本最古の映画館・高田世界館でPing-Pong DJのようです。
日 時 2018年9月15日(土) 16:30開場 17:00開演
場 所 高田世界館 上越市本町6丁目 TEL 025-520-7626
入場料 前売 3,000円 当日 3,500円
高田世界館、戸田書店などで販売
電話予約可 前売料金で当日精算 025-520-7626

    • 黒猫
    • 2018 6/30 10:42am

    鷲巣さん、今週もありがとうございます。
    ビッグ・ビル・ブルーンジーの「イト・ヲズ・ジャスタ・ドリーム」すごく良かったです。
    大仕事、お疲れ様でした。

    • 45979タクシードライバー
    • 2018 6/30 10:21pm

    毎週ありがとうございます。ブルー・ノートの起源すごいです。私が東海岸に初めて行き、当時とても新鮮に感じたのが  HAND ON THE TORCH U S 3 でした。その裏表紙を改めて読んでみました。鷲巣さんがこの3枚組に巡り逢えてよかった。放送今聞き直してます、とても良い!!ありがとう今日の放送永久保存。8月は8日・29日仕事休みます。9月の新潟行きたいなー。。。。。。

  1. 時差で来ました。ありがとうございます。オモテガタが多い夏!

    • フェス ロンゲ
    • 2018 7/4 2:17am

    鷲巣功様 澤田修様
    こんばんは。
    今週の「フロム・スピリチュアル・トウ•スイング」。
    気軽にBGMとして何度も聴いてます。
    早朝だけでなく通勤列車の中や、ひとり焼き鳥やさんのカウンターで。
    ジョン・ハモンド。
    忘れないように心にとどめておきます。
    チャオ!!

    • 金曜日のグリ子
    • 2018 7/6 9:09pm

    今週はスピリチュアルなライブ録音をたっぷり堪能しました。
    まだ本番じゃない夏の夜にゴーヤチャンプルーと沖縄ビールで週末。
    昨日はアメリカングラフィティでアロハ着てアイスキャンディかじってたDJに再会。
    中央FMの番組宣伝で修さんのナレーションと「静岡ロックンロール組合」が!
    鷲巣さん 澤田さん
    今週も更新ありがとう。

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